ハワイのノースショア・ハレイワ(Haleʻiwa)に位置するロコ・エア(Loko Ea / Lokoea)は、古代ハワイ人の高度な水産養殖技術と豊かな文化、そして王族の歴史を今に伝える貴重なフィッシュポンド(養魚池)です 。
1. 伝統の水門「マーカーハー(mākāhā)」の仕組みと知恵
ハワイの伝統的なフィッシュポンドにおいて、最も特徴的な技術革新の一つがマーカーハー(mākāhā / 水門)です。
- 精妙な構造と機能: マーカーハーは、小さな魚が餌を求めて外海や流路から池に入ることを許しますが、池の中の豊かな栄養を食べて丸々と太った大きな魚は外へ逃げ出せないように設計されています。
- 伝統的な素材: 木門(格子)にはオヒア・アイ(ʻōhiʻa ʻai / mountain apple tree)の木が使用され、木質蔓であるイエ(ʻie)のコードで強く緊結して組み立てられました 。木格子の間には0.5インチ(約1.3cm)の隙間が正確に残されており、魚の大きさを選別する仕組みになっていました。
- 理想的な汽水環境: 淡水と海水が交じり合う汽水域(brackish water)は、養魚池において最も魚が繁殖しやすい環境を作り出します 。ハワイの池では、主にボラ(‘ama‘ama)をはじめ、モイ(moi)、アホレホレ(‘āholehole)、アワ(awa / ミルクフィッシュ)などが養殖されていました。
ロコ・エアは1960年代に浚渫(しゅんせつ)が行われ、現在は水深1〜4フィートの3つの池で構成される複合体となっており、2箇所のマーカーハーが設置されています 。

2. 水流と地理的特徴「プウオネ」
ロコ・エアは、海岸近くの砂丘やラグーンを利用して作られたプウオネ(puʻuone)と呼ばれる形式の養魚池です。
上流にあるウコア・フィッシュポンド(ʻUkoʻa Fishpond)付近の湧水(淡水)が「ケイキ・ポンド(Keiki Pond)」を経てメインの池に流れ込み、塩水チャネルを通じてワイアルア湾(Waialua Bay)へと注いでいます 。この淡水と海水の絶妙な循環によって、約6.75エーカーにおよぶ生産性の高い養殖システムが維持されていました 。
3. ハワイ王族(アリイ)の愛した場所と伝説
ロコ・エアは代々、カアフマヌ女王、カメハメハ3世、ビクトリア・カママラ、ルース・ケエリコラニ、バーニス・パウアヒ・ビショップ王女など、ハワイの多くの王族(アリイ)に引き継がれてきました [4]。19世紀後半にはリリオウカラニ女王が夏の別荘を構え、池の隣にあるお気に入りの水泳場を頻繁に訪れていました 。
また、オアフ島の高名な首長カクヒヘワ(Kakuhihewa)は、ロコ・エアで育つ極上のボラ(‘ama‘ama)を大変好み、獲れたての魚を首長に届ける飛脚たちが1日に島を12周走ったという伝説も残されています 。
池には「ボラの神」が住むと伝えられ、大きな白い魚が他の魚を引き連れて現れますが、管理責任者(konohiki)の間では「その白い魚は絶対に捕まえたり食べてはならない」という教えがありました [1]。さらに、ウコア池の守護霊(moʻo)であるラニワヒネ(Laniwahine)の伝承も深く結びついています 。
4. 未来へ受け継がれる保護活動
現在、ロコ・エアと周辺土地の大部分はカメハメハ・スクールズの所有となっており、池の修復や管理のアップグレードを目的とした450万ドル規模の開発保護計画が進められています [4]。
かつてハワイの人々の命と王族を支え、自然の力を活かした水産業の知恵が詰まったロコ・エア。ノースショアを訪れた際は、ぜひその歴史と風を感じてみてください。
参考文献(References)
- Cheever, D., & Cheever, S. (2003). Pōhaku: The Art & Architecture of Stonework in Hawaiʻi.
- James, V. (2010). Ancient Sites of Oʻahu: A Guide to Hawaiian Archaeological Places of Interest (Revised ed.). Mutual Publishing.